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「矯正下着を身につけた社交」を教わった夜(お店日記より)

私の占星術の出生チャートでは、7ハウスに土星があります。象徴の一つに「対人関係が苦手」というのがありますが、実は私もあまり人と関わるのが得意な方ではありません。と言うと、え~?うそ~!?と周囲から返されますが本当に本当に本当です。特に若い頃は他人に合わせるのが苦手で仕方なかったです。しかし、ある日ある時ある場所で偶然出会った人から盛大に叱られたのをきっかけに、矯正下着を身につけて他人の輪に溶け込むことに決めました。

およそ20年前のこと、当時ブラックな制作会社に勤務していた私は、深夜に仕事を終えて、その時会社に居合わせた熊みたいな風貌の後輩君と一杯飲んでから帰ろうかと言うことになり、新宿ゴールデン街に向かいました。ちなみにそれまで新宿ゴールデン街の飲み屋に入ったことがなくて、その時少し怖かった記憶があります。

どこに入ろうかとウロウロ迷って行き着いた先が、内藤陳さんというコメディアン兼著述家が経営するバー「深夜プラスワン」でした。店に入ってみると、確かカウンター席だけだったような。主人の内藤陳さんがカウンターの中でお酒を作っていて、常連客らとのんびり雑談をしていました。

こういう馴れ合った空間が、当時死ぬほど苦手だった私は、人同士が全然絡まない殺伐とした店へ移動したかったのですが、どこでも馴染める才能を持つ、連れの熊男君がそのままスーッとカウンター席に座ったので、仕方なくしぶしぶ座って一杯飲むことにしたのです。

常連客には、ゴールデン街に出没すると噂には聞いていた映画助監督がいて、仕事をぼやいたり愚痴ったりしていました。他の常連客や主人の内藤さんらが笑いながら突っ込んだりする様をみて、熊男君もその輪に自然と溶け込んで笑っていました。しかしその空気に、いよいよ居心地が悪くて困り果てた私。熊男君に合わせてすんなり溶け込めばよかったものの、タイミングを逃したというか、別に溶け込みたくもなかった意固地な私は、いたたまれない気持ちを隠すように仏頂面でハイボールを飲み続けました。

その時、主人の内藤さんから、いきなり一喝されたのです。「その態度はなんだ。こういう場では、周りに合わせるものだ」思い切り意訳ですが、鋭い眼差しを向けられ、確かそんなことを説教された気がします。一番言われたくないことをしかも公衆の面前で叱られた私は、ショックで動揺して固まってしまいました。が、そこは完全なるアウェー。もともと柔軟宮過多の私ですから、そういう展開になったら盾突きませんねん。笑。素直に言うことを聞い(たフリをし)て、周りに溶け込む姿勢を示しました。

随分格好悪くて痛い思いをしたし、内藤さんを少し恨みましたが、その時の荒療治のおかげで、他人と関わる時のコツを覚えた気がします。アウェーでは矯正下着を身につけて、元来の苦手意識を抑えて、そのぶん心は開いて(これもフリですがw)、他人と関わるようにしてからいつの間にかもう20年が経ちました。長くそうやってきたら、その状態に慣れてきたのか、今では(深く掘り下げればやはり苦手意識はあるものの)まぁまぁ普通に社交的になったかなと思います。(あくまで当社比)

というわけで、ネイタルで土星のいるサインやハウスについては、すぐにどうこう出来るものではないけれど、地道に努力的な何かを続けているうちに、だんだんどうにかなっていくのではないでしょうか。これは今だから自分の口で言えることです。土星は「時」の象徴でもありますしね。